◆プロバイダ責任制限法と民事責任

《 個人の権利侵害とプロバイダ責任 》

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◆プロバイダ責任制限法と民事責任

 

 インターネットにおける情報流通を媒介するプロバイダ等(ISP、HSP、掲示板管理者などを広く含む)の中には、権利侵害情報の削除等の措置ができるものもあるが、前述のように、削除等の措置を講じた場合、あるいは講じなかった場合のそれぞれどのようなときに法的責任が生じるのかが明確でない。また、そもそも、削除等を要請された情報が本当に違法な権利侵害に該当するのかどうかを判断することも(中小事業者も多い)プロバイダ等には負担となる。その結果、権利侵害情報が迅速に削除されないことも実際には多く、被害者救済に欠ける状況があった。

 また、被害者の観点からは、権利侵害情報の発信者の責任を追及しようとしても、そもそも発信者の身元を特定することが困難であった。発信者情報はプロバイダ等が保有していることが多いが、発信者情報は通信の秘密やプライバシーに該当することから、被害者(と称する人々)に対して開示することは容易ではないのである。

 これらの問題を解決するために、2001年に制定されたのがプロバイダ責任制限法である。この法律は、権利を侵害すると思われる情報を削除しなかった場合と削除した場合の双方について、一定の要件を満たせば民事責任を免責することを定める(3条)。プロバイダ等の作為義務が生じる場合について前述したが、プロバイダ責任制限法は作為義務が生じる基準を定めるという方法ではなく、作為義務が生じるかどうかは別として、同法の定める一定の要件を充たせば免責されるという形で問題の解決を図っている。なお、この法律で責任が限定されるのは民事責任、しかも損害賠償責任についてであり、刑事責任には本法は適用されない(刑事責任については後述)。

 また、プロバイダ責任制限法4条は、発信者情報の開示請求について規定する(詳細は後述)。

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