《 インターネットでのコンテンツ利用の注意 》 ◆肖像権に関する注意点
§ パブリシティ権
著名人の肖像等については、上記肖像権の他に、パブリシティ権が主張されることがある。パブリシティ権とは、人格権に由来する権利ではあるものの、その経済的側面に着目した権利として考えられている。ピンクレディという著名歌手の写真が雑誌で利用された事案において裁判所は、「パブリシティ権」について、「個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用される権利を有している」ところ、「肖像等は、商品の販売等を促進する顧客誘引力を有する場合があり、このような顧客誘引力を排他的に利用する権利は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものである」と判示している*。著名人の場合、肖像等が公表されることに対する保護の必要性は一般私人に比べ低いと言えるが、その一方で、一般私人と違って、顧客誘引力という形で経済的価値についての保護の必要性が存在することになる。
パブリシティ権の場合であっても、その一方で、当該写真を利用することに対し、表現の自由や知る権利などが対立する可能性があるため、やはり、その両者の調整が必要である。 この点について、前記のピンクレディの事件において、裁判所は、パブリシティ権が侵害される場合として、
- ①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
- ②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
- ③肖像等を商品等の広告として使用する
など、もっぱら肖像等の有する顧客誘引力の利用を目的とすると言える場合を挙げている。
上記例は、限定列挙ではなく、肖像等の顧客誘引力を利用した典型的例を挙げたものとして解されるべきであろう。例えば、一般人のブログ等であっても、アクセス数を稼ぐ目的で、著名人の写真をことさらにアップロードしているような場合は、同人の有する顧客誘引力を利用していると判断される可能性が高いものと思われる。
* ピンクレディ事件(最判平24・2・2民集66巻2号89頁)