《 インターネットでのコンテンツ利用の注意 》
◆肖像権に関する注意点
写真等をネット上にアップロードする場合、当該写真の著作権に留意することは必要であるが、仮に、当該写真を自らが撮影した場合(つまり、自らが著作者・著作権者である場合)であっても、被写体に関しては、別の権利が存在する点に注意しなければならない。重要な例が肖像権であり、被写体として人物が写っている場合には、当該被写体たる人物の肖像権に注意する必要がある。肖像権とは、基本的には、自己の容貌等をその意に反して撮影され、撮影された写真等を公表されない権利* と理解され、法律に記載があるわけではないが、過去の判例によって守られるべき権利として認められている。これは、人が有する人格そのものと結びついているものであるから、当事者が著名人であるか、一般私人であるかを問わず認められるものである。
このような権利の一方で、報道写真などについても肖像権の侵害が認められるとすると、表現の自由や知る権利などが制限されることになる。その両者のバランスを図るため、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超える場合に不法行為が成立するとされている** 。例えば、撮影された場所が私的な屋内か、公の場所か、また、撮影対象としてフォーカスされているか、単に背景として写り込んでしまったのか、などの要素により、被写体たる人物の肖像権として保護される度合いが変わってくることになるが、これと、このような写真の撮影・公表によって実現される利益とを比較衡量して判断されることになる。
とはいえ、人物が写った写真をネット上にアップすることについては、このようなアップロードについて、被写体たる人物の権利があるのであるから、原則的には、被写体たる人物から撮影およびアップロードに対する許諾を得ておく必要がある。 ネット上にアップロードされた写真について、被写体たる人物から権利が侵害された旨の申立があった場合、サーバーの管理者としては、上記のような、被写体たる人物が侵害される利益の程度と、公表によって得られる利益とを比較することになる*** 。
* 法廷内撮影事件(最判平17・11・10民集59巻9号2428頁)等
** 前注 最判平17・11・10
*** 第6章も参照されたい。