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《 インターネットでのコンテンツ利用の注意 》 ◆著作権とは § 著作権者等の許諾なく利用ができる場合

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+ 詳説(引用)

 著作物の利用に関して重要な権利制限条項として、引用(著32条)についても記載しておく。著作権法32条は、公表された著作物を、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる場合には、著作物を許諾なく利用することができる旨を規定している。この「引用」は、適用される利用形態が限定されておらず、複製、上演、放送、自動公衆送信などあらゆる利用形態に適用される(ただし、著作物を変更する場合、翻案、変形はできず、翻訳のみが認められる(著43条2号))。なお、引用する場合には、その出所を明示しなければならないものとされている(著48条)。

 公表された著作物について、例えば批評の際にその対象を明示することは、批評者の見解を述べるために重要である一方、批判する場合には、著作権者の許諾はあまり期待できない。つまり、著作権法上の引用は、引用を行う側の学問の自由・表現の自由と、被引用者側の著作権とを調整するものとして規定されているのである* 。

 ところで、著作権法の引用に関する条文は、すでに見たとおりであるが、裁判例には、適法な引用が認められる要件として、以下のようなものをあげているものがある。

  • (1)明瞭区分性(引用された著作物と、他の部分が明瞭に区分されること)
  • (2)主従性(引用するものと引用されるものとの間に主従の関係があること)

インターネット上には、出典元だけ記載すれば、適法な「引用」として許されるなどの誤った情報が存在することなどもあり、必要な「引用」の要件が満たされていない場合も多い。上記の明瞭区分性や主従性などの要件は、著作権法の条文には記載がないものであり、これらの要件を要求することが適切かについては疑問もあるとはいえ** 、単なる転載・複製に過ぎないような場合と適切な「引用」とを区別するためには、注意が必要である。

* 中山信弘『著作権法』(第2版)2014年、有斐閣、p.320.

** 上掲書、p.323.

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