§ 著作権者等の許諾なく利用ができる場合

《 インターネットでのコンテンツ利用の注意 》 ◆著作権とは

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§ 著作権者等の許諾なく利用ができる場合

 すでに述べたとおり、著作権法とは、著作者等の権利を保護すると同時に、著作物の適正な利用による文化の発展を目的とするものである。全ての著作物の利用に対し、権利者の許諾が必要とされた場合、著作物の利用が事実上阻害される場合も存在するため、著作権法は、著作権者等の権利行使の対象とならない著作物の利用方法を定めている(著30条~49条。これらの条項を著作権の行使が制限されるという意味で権利制限条項ということがある)。これらの権利制限条項は、その多くが著作隣接権についても準用されている(著102条)。

 著作権については、権利行使が及ぶ場面と共に、このように著作権の権利行使が及ばない場面の双方を理解する必要がある。著作権を学ぶ際は、どうしても、“使ってはいけない”という面に注意が払われがちである。特に、日本の場合、いわゆる米国型のフェアユース(Fair Use)のような包括的・一般的な権利制限条項が存在せず、権利制限条項が特定の場面にのみ限定して適用される個別具体的規定になっているため、著作権法を真面目に学ぶほど、著作物の利用が萎縮しがちな傾向にある。著作権を学ぶ際には、許諾なく利用できる場合についても正確に理解しておかないと、著作物の公正な利用が達成できないことになり、結果として、著作権の真の目的である文化の発展が期待できないことになる。

 著作権の権利制限条項は、様々な観点から設けられているが、例えば、以下のような視点で分類すると分かりやすい* 。なお、権利制限条項は、その適用対象がピンポイント的で、非常に細かいことからから、下記には全ての権利制限条項は列記せず、主なものを記載しておく。

(1) 著作物の利用の性質による制限
私的使用目的の複製(著30条1項)
付随対象著作物の利用(著30条の2)
視覚障害者等のための複製(著36条)など

(2) 公共上の理由あるいは非営利利用行為であることによる制限
図書館等における複製(著31条)
教科用図書等への掲載(著33条)
営利を目的としない上映等(著38条)など

(3) 他の権利との調整あるいは著作物の利用促進のための制限
引用(著32条)
時事の事件の報道のための利用(著41条)
公開の美術の著作物等の利用(著46条)など

* 高林龍『標準 著作権法』(第2版)2013年、有斐閣、p.155.

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