§ 裁判外(任意)開示の促進について

《 発信者情報開示制度の改正 》 ◆改正の概要

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§ 裁判外(任意)開示の促進について

 前項の最後に見たように、裁判外開示は改正前も改正後も可能であるが、権利侵害の明白性という開示要件を充たしているかの判断を事業者が行うことは困難だとして、裁判外開示を受けられれば救済面で極めて有益であるにもかかわらず、裁判外開示がなされることはそれほど多くないと言われている。

 この点について、総務省「発信者情報開示の在り方に関する研究会」では、民間主導の取組を総務省が支援するという姿勢が示された。これを受け、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)が、有識者からなる「権利侵害投稿等の対応に関する検討会」を設置して検討の上、2021年4月、「権利侵害明白性ガイドライン」を定め、「権利侵害明白性ガイドライン相談窓口」を設置した* 。

 もっとも、この「権利侵害明白性ガイドライン」によって権利侵害の明白性ありと判断できる事例はかなり限定的である。しかし、裁判外開示には応訴の負担が生じない点でプロバイダにもメリットがある上に、裁判外開示の重要性を指摘した上記の研究会の2つのとりまとめと「権利侵害明白性ガイドライン」、相談窓口とが相まって、裁判外開示の重要性を再認識させるメッセージを発しているといえ、これを契機に裁判外開示が一定程度促進されることが期待される。

* 一般社団法人セーファーインターネット協会(2021)「権利侵害明白性ガイドラインの公表と権利侵害明白性ガイドライン相談窓口設置について」(https://www.saferinternet.or.jp/info/17309/)(access:2022年10月14日)

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