《 個人の権利侵害とプロバイダ責任 》 ◆プロバイダ責任制限法と民事責任
§ 3条2項の免責規定の特例
ところで、3条2項については、その後の法改正によっていくつかの特例が設けられている。1つは2013年のプロバイダ責任制限法改正によって設けられた同法3条の2であり、インターネット選挙運動に関する特例である。選挙運動期間は短いため、迅速な削除が要請されるためである。この関係では二つの免責事由が定められた。
第1は、上述の②の特例であり、選挙運動又は落選運動のためのネット上の情報(特定文書図画)が候補者や政党の名誉を毀損する場合には、発信者への照会期間が7日ではなく2日に短縮される。
第2は、インターネット選挙運動で用いられる情報発信には発信者の電子メールアドレス等の連絡先を表示する必要があるが、こうした表示のない名誉侵害情報の削除による責任は免責される。
さらに、性的なコンテンツについて、発信者への照会期間が2日に短縮されている(リベンジポルノ規制法4条、AV新法16条)。これはもちろん、性的なコンテンツについては拡散が早く被害が深刻化しがちであるために迅速な削除を促すものである。