《 著作権法の改正とインターネットでのコンテンツ利用 》
◆平成30年改正の影響
令和2年改正は、インターネット上の海賊版対策の強化が大きな柱の一つであるため、本稿ではその点を中心に論じることとする。改正点は、a.リーチサイト対策及びb.侵害コンテンツのダウンロード違法化である。
a.リーチサイト対策
これは、いわゆる侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したウェブサイトであるリーチサイトを著作権侵害とするものである。
リーチサイトについては、2010年前半からその問題性は指摘されており、文化審議会などでも継続的に議論されていたが、インターネットの世界そのものがリンクにより組成されており、規定の仕方によっては、インターネットに対する大幅な規制とされることが懸念され、なかなか法制化に至っていなかった。しかし、上記(1)②の問題点を受け、(ア)リーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツへのリンクを提供する行為、及び(イ)リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為を著作権侵害とする旨の改正となった。この際、インターネット上のサイト構築を不当に規制することのないよう、リーチサイト・リーチアプリの定義を、公衆を侵害コンテンツに殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト・アプリ、及び、主として公衆による侵害コンテンツの利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト・アプリとし、また、自ら直接的にサイト運営・アプリ提供を行っていないプラットフォーム・サービス提供者には、本規制が及ばないことを条文上明確化することとされた(著作権法113条2項第1号・2号)。
これにより、リンク行為であっても一定の限度で、著作権行使が可能となった。
b.侵害コンテンツのダウンロード違法化
従来、コピー元が著作権侵害のコンテンツであっても、これを私的利用目的でダウンロードしても、私的利用目的の複製として、著作権侵害とはされていなかった。しかし、海賊版コンテンツの蔓延に伴い、平成21年改正により、音楽・映像については、違法コンテンツを違法と知りながら複製することが著作権侵害とされ、平成24年改正で、有償で提供されるコンテンツの場合は、刑事罰の対象とされていた。令和2年改正は、その対象を漫画等も含まれるべく著作物一般に拡大したものである(著作権法30条1項4号・第2項、119条3項2号、同5項)。ただし、この規定が、私的生活領域において重大な影響を与えることに鑑み、漫画の数コマ等「軽微なもの」、二次創作・パロディ、及び著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合は、対象外とされることが明記された。
また、写り込みに関する権利制限規定の対象範囲も拡大され、生配信、スクリーンショット等についても、権利制限規定の対象とされることとなった(著作権法30条の2)。
この改正により、ネットユーザーは、私的利用目的であっても、違法コンテンツをそれと知りながらダウンロードする場合は著作権を侵害することとなるため、一般ユーザーに対する普及啓発が必要となる。ただし、いわゆるストリーミング型のサイトを閲覧する行為は、著作権侵害ではないため、かかる改正によっても、ストリーミング型の海賊版サイトを閲覧するユーザーの行為は規制できず、原則どおり、サイト運営者側を効果的に規制する必要がある。