《 発信者情報開示制度の改正 》 ◆改正の概要
§ 「新たな裁判手続」(「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」)
①については、現行法では、コンテンツプロバイダ(SNS事業者など)に対する仮処分申立てによってまず発信者のIPアドレスやタイムスタンプの開示を受け、その情報をもとにアクセスプロバイダ(携帯電話事業者など)に対して本案訴訟を提起して発信者の住所・氏名の開示を受けるという2段階の手続、しかも裁判手続が必要となっている。今回の改正で導入された「新たな裁判手続」(法律上は「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」と呼ばれる(改正後の第4章))は、これを1度の非訟手続で行うことが可能となった(図2参照)。
そこでは、権利侵害の明白性など発信者情報開示の要件が充足されているかどうかの審理と並行して、コンテンツプロバイダからアクセスプロバイダへの発信者情報の提供と、後者における発信者の特定作業とがなされ、裁判手続が1度で済むことはもちろん、トータルとしての開示までの期間の短縮が企図されている。また、非訟手続であるために立証方法や程度について裁判所による柔軟な判断が可能となり、事案の争訟性の程度に応じて、裁判所の判断によって、迅速に対応すべき場合と、じっくりと争わせるべき場合との切り分けが可能となった。

出典:総務省(2021)「プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律案(概要)」を元に筆者作成