§ AI活用にあたってデジタル・コンテンツ・アセッサが留意すべきこと

《 AIに対する社会的関心の高まり 》 ◆AIの普及・発展と社会の変化

← 前へ

§ AI活用にあたってデジタル・コンテンツ・アセッサが留意すべきこと

 AIを活用することにより仕事の効率化などが期待されているが、活用におけるリスクとして、教育、個人情報保護、そして、著作権などについて指摘や議論がなされている。

 教育分野においては、多大な利便性の反面、個人情報の流出、著作権侵害のリスク、偽情報の拡散、批判的思考力や創造性、学習意欲への影響等への懸念が指摘された。文部科学省が2023年に「初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」を公表している*1。ガイドラインは、AIの教育利用には多大な利便性があることを認めつつ、個人情報の流出、著作権侵害のリスク、偽情報の拡散、批判的思考力や創造性、学習意欲への影響等、様々な懸念を考慮する必要性を指摘している。なお、このガイドラインは一律に禁止や義務付けを行うものではなく、生成AIの活用の適否を判断する参考資料となっている。高等教育機関における大学の対応については各大学によって異なっており、教育分野における生成AIの活用については、活用のあり方について議論が行われている状況といえる。

 生成AIと個人情報の観点から指摘されていることは、学習データの中に個人情報が含まれていた場合の情報の取り扱いである。この点が不明確であるため、個人情報流出に繋がるおそれがある。この点については、個人情報保護委員会が2023年に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」において、個人情報の入力や取り扱いに留意することを示している*2。

 生成AIの現状としては、業務効率化や新たな創作活動の手段などのような活用が期待される反面、偽情報が含まれる可能性や生成画像の著作権など数多くの課題が残っている。リスクマネジメントの視点で考えると、生成AIによる問題が生じないよう、「使用しない」というリスク回避的な選択も考えられる。しかしながら、今後の少子高齢化による人材不足などの社会状況を考えた場合、生成AIを含むAI等の活用は有力な選択肢となると考えられるため、政府や様々な団体が発する情報を参考にしつつ、リスクの低減を目指しながら利活用するとともに、知見を増やしていく選択も検討すべきであろう。そして、現時点においては、生成した文章に偽情報が含まれていないかを確認するファクトチェックの作業や、生成した画像が著作権侵害等の権利侵害に該当しないかどうかの確認作業など、人の手による確認や修正作業は重要であるといえる。

*1 文部科学省(2023)「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」(https://www.mext.go.jp/content/20230710-mxt_shuukyo02-000030823_003.pdf)

*2 個人情報保護委員会(2023)「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/)

PAGE TOP