《 AIに対する社会的関心の高まり 》
◆AIの普及・発展と社会の変化
AIがインターネットなどを介して他のAI・情報システムなどと連携し、ネットワーク化されることで、その便益及びリスクの双方が飛躍的に増大するとともに、空間を越えて広く波及することが見込まれる 。そして、2018年の著作権法改正でAI開発のための学習データとして活用することが法的に認められるなど、さらなるAI技術の発展が期待されている*1。
AIの発展が社会に与える影響については議論が続いており、約10年前となる2015年には、オックスフォード大学のマイケル・オズボーンとカール・フレイ、野村総合研究所の共同研究で、日本の労働人口の約49%が就いている職業がAIに代替可能と試算し、大きな話題となった*2。この話題について総務省は、2019年の情報通信白書において、「AIの発展・普及により新たに生じると考えられる雇用を考慮に入れておらず、AIによる雇用への影響については、現時点では様々な議論が行われている段階であるといえる。」とし*3、2019年に公表された「AI利活用ガイドライン」にて、「安心・安全で信頼性のあるAIの社会実装」の推進に向けて取り組む姿勢を示している*4。
AIが劇的な変化をもたらすとする議論としては、「シンギュラリティ(技術的特異点)」についての議論が大いに注目を集めている。シンギュラリティは物理学でブラックホールを指す用語として使われていたもので、レイ・カーツワイルによると、技術の急速な変化によって甚大な影響がもたらされ、人間生活が後戻りできないほどに変容してしまうという*5。カーツワイルは、AIのシンギュラリティについて、AIが自身の設計を繰り返し改善するサイクルが加速していく*6ことや、シンギュラリティが2045年に到来する*7ことを指摘している。
*1 首相官邸(2023)「AI生成物と著作権について」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kousou/2023/dai2/siryou1.pdf)
*2 野村総合研究所(2015) 「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に」(https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf)
*3 総務省(2019)『令和元年版 情報通信白書』総務省、p90. (https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/n1300000.pdf)
*4 総務省(2019)「AI利活用ガイドライン」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000624438.pdf)
*5 Ray Kurzweil(2005)The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology, Viking, p7.(井上健監訳(2007)『ポスト・ヒューマン誕生:コンピュータが人類の知性を超えるとき』日本放送出版協会、p16.)
*6 Ibid, p27-28.(上掲書、p43.)
*7 Ibid, p135-136.(上掲書、p151.)