ソーシャルメディア
ソーシャルメディアのリスク
【ソーシャルメディアの特質とトラブル】
ユーザーが特定のソーシャルメディアの操作に習熟する前に、新しいソーシャルメディアが次々と登場してくる。
ソーシャルメディアでは、スマートフォンを用いて手軽に情報発信できるので、ソーシャルメディアの特性を理解していないユーザーによる不用意な投稿等がトラブルを引き起こしている。
ソーシャルメディアは、消費者や顧客と直接の関係性を形成することを可能とするため、多くの企業組織が活用している。製品やサービスそのものを擬人化してソーシャルメディアのアカウントを運用することも活発に行われており、こうした「擬人化アカウント」では、運用担当者がうっかり個人の立場で発言してしまうことでトラブルが引き起こされることがある。
一つの企業組織が製品・サービス毎に異なる複数のソーシャルメディアのアカウントを並行運用することがあり、その場合、必ずしも全てのアカウントについて十分な管理が行き届かなくなることもある。
いわゆる「軟式アカウント」では、自社の組織・製品・サービスについての発言に限らず、あえて担当者個人としての感想を織り交ぜて発信することで、企業情報を一方的に発信する公式アカウントでは得られない関係をユーザーとの間で築くことも可能である。反面、ユーザーとの関係性が近くなりすぎて馴れ馴れしい発言をしてしまったり、ユーザーのネットストーカー行為を引き起こしてしまったりするリスクも存在する。
ソーシャルメディアのリテラシーが低い企業組織は、ソーシャルメディアの運用を丸ごと外部委託するという安易な選択をすることがある。(委託先の監督を怠ると、委託先が”暴走”しても気づかず、問題を深刻化させてしまう)
ソーシャルメディアでは、あるアカウントのフォロワーが、別のフォロワーの発言を見ることが可能である。そのため、アカウントを持つ個人が、自分自身では所属する企業名などを一切公表しないように運用していても、そのフォロワーの発言内容から、企業名が特定・類推されることがある。
【レピュテーションリスクのインパクト】
レピュテーションとは、企業の信頼感や評判といった価値のことである。ソーシャルメディアはその性質上、レピュテーションリスクが高い。
ソーシャルメディアでは、ネガティブな情報は、従来のメディアと比較すると短時間かつ広範囲に伝播していく。
【ソーシャルメディアの悪用とネガティブキャンペーン】
ソーシャルメディアでは、業者が一般ユーザーを演じ、その業者にとって有利な情報を書き込む、いわゆる自作自演の「やらせマーケティング」が問題となっている。「やらせマーケティング」はソーシャルメディアの利用規約に抵触する可能性の高い行為ではあるが、一般ユーザーはもとよりソーシャルメディア運営者でもそれを判別・検知することは難しい。ユーザーにとっては、「やらせマーケティング」はノイズであり、競合他社にとっては、「やらせマーケティング」は顧客を奪われる可能性のある不当な手段である。
他方、ソーシャルメディアでは、業者が一般客を演じ、競合他社の製品やサービス等に対して悪い評価やネガティブコメントを書き込むという問題がある。標的にされた企業にとってはソーシャルメディアのネガティブキャンペーンは発見しにくく、一度ネットに伝播してしまった悪評は削除しにくく修正も容易ではないので、問題は深刻である。
前者の「やらせマーケティング」の例:ユーザー同士が各種の知識や知恵を教えあう「知識検索サービス」を利用して、業者が一般ユーザーを演じて質問を書き込み、同様に他の一般ユーザーを演じて回答を書き込む。
後者の「ネガティブコメント」の例:「グルメサイト」では、飲食店情報を集積し、ユーザー同士がメニューや味などの情報を教えあうようになっている。これを悪用して、一般客を演じて特定の飲食店のメニューに悪い評価やネガティブコメントを書き込み、営業妨害をする。
【ソーシャルメディア上のレピュテーションリスクのインパクト】
各種ソーシャルメディアを利用し、競合商品やサービス、会社、経営陣を悪く評価するネガティブキャンペーンは、低コストかつ容易に実施可能である。
また、ソーシャルメディアは情報が短時間で広範囲に伝播するため、早急にリスク対応しなければ、影響力が増大し被害が拡大する一方となる。
ソーシャルメディアのリスクは、時間が経つほど規模が拡大して対応困難になる。そのため、そのリスク対応は迅速で適切な情報発信による拡大の抑制が基本である。