ソーシャルメディアのインシデント

ソーシャルメディア

ソーシャルメディアのインシデント

【様々なインシデント】

ソーシャルメディア上で遭遇する可能性が高いものとしては以下のものが挙げられる。

・炎上:管理者の意図する範囲を大幅に超えて、非難・批判のコメントが殺到すること

・電凸:組織に直接電話などで取材を行い、意見を問い質す(糾す)行為

・祭り:集団で特定の発言やユーザーを叩いたり、個人情報を流出させたりすること

・なりすまし:本人には無断でアカウントを作成し、本人であると偽って運用する

【炎上】

ソーシャルメディアの「炎上」の原因は、反社会的な記事・言動の発信、間違った知識の発信、主義の対立、根拠のない提灯記事、身分を隠した自組織の擁護、問題の放置や無自覚、問題の過小評価、対応窓口・体制の不備、ソーシャルメディアの不理解、不適切・不誠実な対応、言い逃れ、威嚇、脅し、切り捨て、責任転嫁、先送りが挙げられる。

炎上そのものがエンターテインメントとしてコンテンツ化し、規模が拡大していくという「負の連鎖」に注意が必要。

対応としては、炎上を兆しの段階で把握し、検知したなら規模が拡大する前に抑えこむ仕組みを構築しておくことが重要である。

炎上は、フレーミングとも呼ぶ。

【電凸】

「電凸」(でんとつ)とは、「電話で突撃取材」の略。

電凸に対して、組織を代表する権限や問題について正確な知識を持たずに、安易な対応をしてしまうと問題となる。こうした対応がソーシャルメディア上に投稿され、炎上を引き起こしたり深刻化させたりする。

電凸への対応にあたった担当者が攻撃的な態度をとった場合、そのことがソーシャルメディア上に投稿され、あたかも当該組織の総意であるかのように公開されることがある。こうした場合も、炎上を引き起こしたり深刻化させたりする。

対応としては、組織として電凸対応マニュアルや手順の整備を進め共有することが重要である。

※類語として、「メールで突撃取材」を意味する「メル凸」がある。

【祭り】

「祭り」とは、集団で特定の発言やユーザーを叩いたり、そのユーザーの個人情報やユーザーが所属する組織の情報を流出させる行為(晒し)を行ったりすることである。

企業組織は、自らの発言等に問題がなくても、特定の個人の発言等が引き金となって「祭り」が発生したときにも注意が必要である。その個人が関係している企業組織に関する情報が晒されることで、企業組織が間接的に攻撃対象となる可能性があることに留意しておかなければならない。こうした場合、企業組織の従業員のソーシャルメディア上での発言等については、あらかじめ企業組織が従業員に注意喚起できるものの、従業員の家族の発言等まで企業組織がコントロールすることは困難であるので、企業組織はいつ「祭り」に巻き込まれてもおかしくはないという意識を持つべきであろう。

対応としては、「祭り」が起こる兆しを早期に検知・把握する仕組みを構築しておくことが挙げられる。

【なりすまし】

ソーシャルメディアは、他者を名乗ってアカウントを無断で作成することが容易であるため、ソーシャルメディアにおいて「なりすまし」は頻繁に発生し得るインシデントと言える。

※ちなみに、本人には無断でアカウントが運用されているものの、本人だという偽りはせず、本人ではないことを明らかにして運用する形態は、「非公認」と呼ばれる。

「なりすまし」には、「害意を持ったもの」と「善意によるもの」の双方がある。前者は、なりすまされた者の悪評を立てるために行われるものであるが、後者は、対象がソーシャルメディアのアカウントを開設していないため代わりに開設したといった動機で行われることがある。

害意あるなりすましの対象となりやすいのは、経営者、タレント、学者、政治家などである。特にインターネット選挙運動が解禁されてからは、政治家のなりすましがツイッターやフェイスブックに横行し、差別発言を投稿するなど、本人のレピュテーションを低下させる発言を行った。

近年のAIの進展に伴い、AIでなりすましの対象の映像を学習しCGで再現する技術が進化しており、この技術を悪用した「ディープフェイク」と呼ばれるなりすましが発生している。ディープフェイクは容易には偽物だと知覚できないので、新たな課題となっている。

【ソーシャルメディアの監視・監査の手法】

ソーシャルメディアのリスクでは早期発見・早期対応が肝要だが、ソーシャルメディアで自組織が関わるインシデントが発生していないことを確認し、仮に発生した場合には早期に認識するために、以下に挙げる手法を普段から用いておくべきである。

・ソーシャルリスニング:ソーシャルメディア上での発言を傾聴すること

・エゴサーチ:個人であれば、自分の氏名やハンドルネーム、運営サイトやブログ名など、企業であれば、企業名や製品名、サービス名、役員名などで検索をして、自分自身のインターネット上での評価を確認すること

・アラートサービス:指定した情報がインターネット上に公開されたとき、アラートメールを送付するサービスのこと

【ソーシャルメディア上のリスクの予防的な管理方法】

ソーシャルメディア上のリスクに効果的に対応するには、実際にインシデントが発生する前に準備しておく必要がある。そうした予防的な管理方法としては、以下の2つが挙げられる。

・ソーシャルメディアポリシーの策定:ソーシャルメディアポリシー(組織として、従業員がどのようにソーシャルメディアを運用するかの方針)を策定する。策定にあたっては、それぞれの企業組織の経営戦略や企業活動に合わせて策定することに留意し、実際の企業組織のソーシャルメディアの活用状況に合致するようにする。

・演習型訓練:ソーシャルメディアのインシデント対応は、実際に対応の流れを一通り体験しないと、実効性がある対策なのか確認できないことも多いため、インシデントの演習を行う。炎上の兆しの検知から、発見した場合の報告、外部への公表など、一連のインシデント対応の流れを体験する。