《 個人の権利侵害とプロバイダ責任 》 ◆プロバイダの責任とは
§ プロバイダの法的地位
通常、プロバイダといえば、インターネット接続サービスを提供するアクセスプロバイダ(ISP)のことを意味することが多く、この意味でのプロバイダはインターネット接続サービス事業者などとも呼ばれる。しかし、ウェブホスティングサービスなど他人の情報発信の機能や場を提供するホスティングプロバイダ(HSP)も含めてプロバイダと呼ばれることもある。実際には、多くのプロバイダは両方のサービスを提供している。
これらは他人の情報発信を媒介する役割を果たしている点で共通し、後に述べるプロバイダ責任制限法(正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)*にいうプロバイダ(同法の文言では「特定電気通信役務提供者」)にはISPとHSPの両者に加え、大学、地方公共団体、電子掲示板を管理する個人等も含まれる点に注意が必要である。これらは、常識的な意味でのプロバイダには含まれない場合があるため、本章では、これらを合わせて「プロバイダ等」と呼ぶことにする。
これに対して、インターネットのコンテンツを自ら発信するものをコンテンツ・プロバイダと呼ぶことがあるが、これにはSNSのように情報の媒介者として上述のプロバイダ等に含まれるものと、自ら情報の発信主体となるものとしてプロバイダ等に含まれないものとがあり、多義的な概念である。
* プロバイダ責任制限法は、2025年●月1日施行の改正法により、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法、正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」)という名称になる。改正法は、従来の規定はそのままに、大規模プラットフォーム事業者の義務を追加したものであり(この点については後述する)、以下のプロバイダ責任に関する説明は改正後もそのまま通用する。