iコンプライアンス
運用管理と体制整備
【標準的な業務管理手法とiコンプライアンスプログラム】
デジタルコンテンツアセッサがiコンプライアンスを実施する仕組みを具体化していく際、どのような手法を採り入れるべきであろうか。当機構(I-ROI)では、標準的な業務管理手法(PDCAサイクル)に則ってiコンプライアンスプログラムを運用することを推奨する。
【PDCAサイクル】
PDCAサイクルとは、品質管理や生産管理などの管理業務を円滑に進めるために提唱されたフレームワークである。多くの企業組織で用いられており、いわば標準的な業務管理手法と言っても過言ではない。
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)を常に繰り返し続けることによって、継続的に業務を改善しようとする手法である。
【iコンプライアンスプログラムの実施で期待できること】
組織が内部規則で禁止規定を設けても、それが規定通りに運用されていることをきちんと監査していなければ、禁止規定は機能しない。標準的な業務管理手法であるPDCAを用いたiコンプライアンスプログラムを実施することは、このような「内部監査の不備」を発見することに繋がる。
もちろん、このように継続的に業務を改善しようと活動していくことで、コンテンツの現状をしっかりと把握することができ、違法・有害情報を不用意に発信してしまうことが回避できるようになる。
【国外の法制度について】
言うまでもなく、インターネットは国境の垣根を容易に飛び越えて情報を受発信することを可能にするものであるから、日本国内で生成されたコンテンツが国外で利用されたり、国外で生成されたコンテンツが国内で利用されたりすることは珍しくない。
インターネットコンテンツに関する法規制は、例えば著作権に関するベルヌ条約のようにある程度まで共通化されているルールもあるが、もちろん、国によって異なるルールが適用されることもある。
場合によっては、日本国内でインターネットを利用していてもそうした外国の法規制の影響を受けることがあるので、iコンプライアンスの達成のために、実務上、日本の法制度のみならず外国の法制度も意識しておくべきである。
そうした外国の法制度について、ここでその全てを列挙することはできないが、特に留意すべき外国の法制度としてSNSをはじめとする様々なインターネット上のサービス提供者が本拠地を置くアメリカの「デジタルミレニアム著作権法」を一例として解説する。
【デジタルミレニアム著作権法】
アメリカでは、デジタルメディア上の著作権侵害はサービス提供者(サービスプロバイダ)に故意・過失が無くても罰せられる無過失責任制を採用しているため、サービス提供者が著作権侵害の実態調査を行ったり、著作権侵害を主張した者の確認を取ったりする前にコンテンツを迅速に削除・遮断しても罪に問われないという「ノーティス・アンド・テイクダウン」がある。
そのため、アメリカのプラットフォーム運営会社では、デジタルミレニアム著作権法に基づく著作権侵害主張があれば、主張の真偽を判断することなく自動的にアカウントを凍結処理してしまうことがある。(この制度を悪用して、著作権侵害主張を行い相手企業のビジネスを妨害するというケースもある)
例えば、ある大手プラットフォームのアカウントを持つ日本企業A社が、同じプラットフォームのアカウントを持つ日本企業B社のアカウント上に、自社の著作権を侵害するコンテンツがあることをアメリカ企業であるプラットフォーム運営会社に訴えると、アメリカのデジタルミレニアム著作権法を根拠に、A社の主張の真偽を判断することなく自動的にプラットフォーム運営会社がB社のアカウントを凍結するということが起こり得る。
※上記の例の場合、A社とB社は共に日本企業であるが、プラットフォームを提供する会社はアメリカ企業であり、このプラットフォーム上で受発信されている情報はアメリカの法律であるデジタルミレニアム著作権法の規制の影響を受けることに留意すべきである。