《 インターネット上の個人情報保護 》
◆個人情報保護法の概要
1970年代に先進諸国で法整備が進み、日本でも地方自治体の条例が制定され始めたことはすでに述べた。国レベルの法整備は遅れたが、1980年代に入ると、行政改革の文脈で個人情報保護法の制定が検討された。1988年、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」(旧行政機関個人情報保護法)が制定されたが、不備も多かった。
1990年代後半になると、民間部門も含めた個人情報保護制度の整備充実の必要性が社会に認識されるようになった。その背景には、1995年、EUで個人情報保護指令が制定されるなど、個人情報保護についての国際的な動きがあったことや、国内で個人情報の大量流出事件が相次いだこと等があるが、法整備の直接のきっかけは、1999年の住民基本台帳法改正による住基ネットの導入である。紆余曲折はあったが、2003年には個人情報保護関連5法* が成立し、行政機関と民間部門をカバーする現在の個人情報保護法制の骨格が形成された。
その後、社会保障・税・災害対策分野における国民利便の向上および行政運営の効率化を図るために共通番号制度(マイナンバー制度)が導入されることとなり、2013年に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(番号法)および関連法が成立した。こうして形成された日本の個人情報保護法制は、個人情報保護関係5法および番号法と、各地方公共団体の個人情報保護条例とからなっており、複雑である。
また、2015年にはビッグデータ利活用の要請が強まってきたことなどの状況を受けて、個人情報保護法の改正が行われた。さらにその後は、デジタル社会に向けた変化が急となり、個人情報保護法制は頻繁に改正を受けるようになる。2016年には行政機関個人情報保護法の改正が、2020年には個人情報保護法の改正が行われ、さらに2021年には個人情報保護法に関する官民の法律が統合され、地方自治体の個人情報保護についてもその法律によって規律されることとなり、個人情報保護に関する法体系が個人情報保護法に一本化された(ただし、番号法は存続している)。
* 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律、情報公開・個人情報保護審査会設置法、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律。