《 不正アクセス 》 ◆改正前不正アクセス禁止法に定める禁止行為 § 不正アクセスの解釈
+ 詳説(2点の争点)
1点目として、「アクセス制御機能」の有無をコンピュータというハードごとに判断するのか、FTPとHTTPを別個に判断するのかという点が争われた* 。この点について裁判所は条文上の文言上もハードごとに判断するものとし、研究員がアクセスしたサーバーにFTPでのアクセスにはアクセス制限機能が設けられている以上、「アクセス制御機能を有する特定電子計算機」(2号参照)にあたるとした。
また2点目として、研究員の採ったアクセス手法によれば、識別符合の入力をせずにログファイルの閲覧が可能であったことから、そもそもアクセス制御による制限が有ると言えるのかが問題となった。この点については、「制限がプログラムの瑕疵や設計上の不備によるアクセス管理者の意図に反して不十分な場合、そのことをもって特定電子計算機の特定利用を制御するためにアクセス管理者が付加している機能をアクセス制限機能と認められないこととするのは、プログラムやコンピュータシステムが複雑化し、プログラムの瑕疵や設定の有無を容易に判断、修正できない現状に照らして現実的ではないし巧拙について客観的に判定する基準も存在しない。
そうすると、アクセス管理者が当該特定利用を誰にでも認めている場合には、アクセス制御機能による特定機能の制限はないと解すべきであるが、プログラムの瑕疵や設定上の不備があるため、識別符合を入力する以外の方法によってもこれを入力したときと同じ特定利用ができることをもって、直ちに識別符合の入力により特定利用の制限を解除する機能がアクセス制御機能に該当しなくなるわけではない」と判断されている。
* FTPとHTTPは別個のものと考えれば、アクセス制御がなされていないHTTPによるアクセスである以上、不正アクセスにあたらないという結論が導かれる。