《 個人情報保護法及び電気通信事業法の改正 》 ◆2020年改正の概要
§ 個人の権利保護の強化
個人の権利保護について、いくつかの点で強化された。図のとおりであるが、いくつかについて補足を含めて取り上げる。
まず、利用停止・消去等の個人の請求権が行使可能な場合が拡大された。従来、適正な取得や目的外利用の場合に限って認められていたが、「個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはならない。」という2020年改正で追加された規定(19条)に反した場合も利用停止・消去等の請求権が行使できることとなった(35条1項)。上記19条の規定は、官報で公告された破産者の住所氏名を、地図上にマッピングする形でインターネットで公開する「破産者マップ」などと称される一群のサイトが問題化したことなどを受けて設けられたものである。
保有個人データの開示方法について、従来は書面の交付が原則であったところ、電磁的記録の提供を含め、本人が指示できるようになった(33条1項)。電磁的記録の形で開示を受けることができれば、これを他の用途に用いることが容易となるという意味において、データポータビリティ権に通じるものだとも評価しうる。
個人データの第三者提供を行うには、原則として本人の事前同意(オプトイン)が必要であるが、その例外として、住宅地図業者が住宅地図を制作して販売するために個人情報を収集する場合のように、第三者提供を利用目的とする場合において、所定の条件を充たしていれば、オプトアウト(事後の申し出による除外)によって第三者提供を行うことが認められている(27条2項。書籍教材111頁)。この規定については、いわゆる名簿屋に利用されるなど個人情報の保護の観点から批判も強く、2020年改正では規律が厳格化された。特に、従来は、この規定によって第三者提供されたものをさらにこの規定に基づいて別の第三者に提供することが可能だったが、こうした行為は禁止された。

出典:個人情報保護委員会(2020)「概要資料」を元に筆者作成