《 不正アクセス 》 ◆コンプライアンスリスク § 経済的負担
+ 詳説(不法行為責任を契約約款の免責規定で逃れるか)
最後に、不法行為責任を契約約款の免責規定で逃れることができるのかという点について触れておきたい。
事業者としては、上記のような損害賠償リスクを軽減するために、利用者との契約(約款)において、第三者による不正アクセスによってシステムが利用できなかったことによる損害や情報が漏洩したことによる損害について責任を負わない旨の規定を設けておくことが考えられる。
このような規定は今日多くのウェブサービス(クラウド等を含む)にも用いられているものであるが、その有効性が常に認められるかは疑問がある。不正アクセスと免責条項の関係について直接判示した判例は存在していないが、ホスティングサーバーのデータ消失時の免責規定などの効力について判例が存在しているところである。
結論としては、免責規定も直ちにその効力が否定されるものではないが(ただし、重過失免責規定については、その効力が否定される可能性は少なからず存在する)、上記エステティック事業者の判例のようなケースでは、注意義務違反の程度が著しく、当該事案において免責規定の効力が否定される可能性も否定できないところであり、システム管理者である事業者としては免責規定に頼って必要なセキュリティ対策を怠るような愚は犯すべきではなかろう。