《 ソーシャルメディア時代のメディア情報リテラシー 》 ◆誤りを事実と受け止める理由
§ すっぱいブドウと認知的不協和
イソップ寓話の「すっぱい葡萄」を知っているだろうか。おなかをすかせたキツネが美味しそうなブドウを見つけるという話である。
キツネは美味しそうなブドウだと飛びつく。でも、高い木の上になっているから手が届かない。無理だとわかった瞬間に「どうせあのブドウは酸っぱい」と自分を納得させて、キツべは立ち去っていく。
ブドウが酸っぱいかどうかは食べてみないとわからないはずだが、お腹がすいているのにブドウに手が届かないという自分にとって不快な状況認識を「認知的不協和」といい、これを解消するために「ブドウは酸っぱいはずだ」という根拠のない情報で上書きしてしまう。
似たような経験は多くの人にあるだろう。自分にとって不快な情報を見聞きした際に、人間は自分を守る反応をしてしまう。これが認知バイアスの働きである。イソップ寓話が生まれる頃、つまり、インターネットが生まれるはるか前から、人間に備わっているものである。