§ AI開発・学習段階

《 AIと著作権 》◆生成AIと著作権に関する基本的な考え方

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§ AI開発・学習段階

 AI学習に著作物を利用することについては、一般的・抽象的な権利制限規定を導入した平成30年著作権法改正において、以下のとおり規定され、「著作物に表現された思想又は感情の表現を目的としない利用」という考え方が明確にされた。

著作権法30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
 著作物は、次に次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 1号(略)
 2号 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第47条の5第1項第2号*において同じ。)の用に供する場合  3号(略)

 ここでいう「享受」とは、著作物の視聴等を通じて、視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられ行為をいい、例えば、文章なら、読むこと、音楽・画像等なら鑑賞することなどがこれに当たる。人間が著作物を利用する行為は、知的・精神的活動を伴うことがほとんどであるため、「享受」にあたるが、生成AIによる学習用データの利用は、対象を単に「データ」として解析のために利用することが想定されているため、原則として、これに当たらないとされたものである。ただし、著作権者が著作物から経済的利益を得ていることを考慮し、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は例外とされた。

 したがって、AI開発・学習段階での利用について、「享受」の目的が併存していないか(非享受目的要件を満たしていないことになるか)、また、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に当たらないか、の2点において、検討する必要がある。

* 47条の5は、「新たな知見・情報を創出する電子計算機による情報処理の結果提供に付随する軽微利用等」に関する権利制限規定であり、所在検索サービスや情報解析サービスなどにおいて、その結果の出力の際に、著作物を軽微な形で出力する場合を想定している。

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