インターネット 有害
インターネット上の違法・有害情報
インターネット上の違法・有害情報
(2)違法情報
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(2-1)違法情報の種類
- 違法情報とは、端的に言えば法に違反する情報である。しかし、法に違反する情報とは言っても、名誉毀損・プライバシー侵害、又は著作権侵害のように、民法上不法行為となる権利侵害情報と、いわゆる「わいせつ」、児童ポルノ等、権利侵害の有無とは関係なく、刑法等で禁止されている公法的な違法情報がある。
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(2-2)権利侵害情報
- 第三者の権利を侵害する情報は、法に違反する情報として違法情報に該当するものと解されている。典型的には、名誉毀損・信用毀損、プライバシー・肖像権侵害、著作権・商標権侵害などである。これらの情報をまとめて便宜上「権利侵害情報」と称することがある。
- これらの権利侵害情報は、被害者が存在するという特徴があり、通常、被害者からの権利侵害の申立という形で顕在化することが多い。このような被害者の権利の救済と、インターネット上での表現の自由などの尊重という両方のバランスをとる手段として、プロバイダ責任制限法が制定され、さらに、同法に基づく判断を具体化するものとして、同法のガイドライン等が制定されている(詳しくは第6章を参照)。
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(2-3)公法的違法情報
- 違法情報には、被害者の権利侵害を前提とせず、刑法等で直接禁止されている情報が存在する。
- 具体的には、児童ポルノ(児童買春・児童ポルノ禁止法)、わいせつ(刑175条)、規制薬物の広告(麻薬取締法29条の2)などである。
- これらは、一定の表現行為そのものが刑罰をもって禁止されているものであり、これらの情報を発信する行為が規制されているものである。
- なお、これらの情報については、一定の表現内容そのものが違法とされていることから、たとえば、「わいせつ」などその判断が難しいものもあり、最終的な違法性の判断は裁判所が行うことになる。とはいえ、児童ポルノや、規制薬物の広告などは、違法性の判断がそこまで難しいものでもなく、そのような情報がインターネット上で流通することはできるだけ防ぐ必要がある。
- 違法情報の投稿自体が禁止されていることは前述のとおりだが、かかる情報の媒介者であるプロバイダにおいても、現在、このような情報を自主的に削除するための活動が行われている1。そもそも、これらの情報は、発信することが認められていないものであるから、サーバー管理者としても、これらの情報を必要な限度で削除しても管理者が責任を問われることはない。
- その一方、違法情報の投稿を知りつつそのまま放置しておいた場合は、違法情報への拡散行為を幇助したとして刑事責任を問われる可能性があるため、サーバー管理者としては適切な対応が必要である2。
- 特に、児童ポルノに関しては、実在の児童への被害の程度が大きいことから3、2011年4月より、民間の自主的取組の一環として、児童ポルノ情報への接続を接続プロバイダが強制的に遮断するブロッキング4が行われている。ブロッキングは、通信の秘密を侵害する危険があることや、情報のアクセスそのものを強制的に遮断するという効果が強力過ぎることなどから、一般の違法情報には導入されていない。
- また、投稿内容に対する法的規制のうち、成人による投稿は禁止されていないが、未成年による投稿が違法とされるものがある。2013年の公職選挙法の改正により、ネット上での一定の選挙活動が認められるようになったが、公職選挙法では、そもそも、未成年の政治活動を罰則をもって禁じている(公職選挙法239条、137条ノ2)。つまり、ネット上の選挙活動に関する投稿は、成人にとっては合法でも未成年の場合は違法となる点に注意が必要である。
- 1 電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本インターネットプロバイダー協会、日本ケーブルテレビ連盟「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」2014年。(http://www.telesa.or.jp/wp-content/uploads/consortium/illegal_info/pdf/20141215guideline.pdf)
- 2 状況によっては共同正犯として投稿者と同じ刑事責任を問われる場合もある(東京地判平18・4・21判例集未搭載、評釈として刑事法ジャーナル9号135頁など)。
- 3 日本では、児童ポルノは、実在の児童の存在を前提としている。
- 4 児童ポルノのブロッキングは、現在、特定ドメインを指定する方法で行われているのが一般的であり、一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会が、かかるURLリスト作成管理団体として活動している。ブロッキングの詳細については、同団体のウェブサイト(http://www.netsafety.or.jp)を参照されたい。