+ 詳説(リスク対応に際して)

《 デジタルコンテンツアセッサのリスクマネジメント業務 》 ◆リスクマネジメントの標準規格

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+ 詳説(リスク対応に際して)

 ある程度の規模の影響を持ったリスクの場合は、⑦の「リスクの保有」を選択するのは不適切であろう。残りの①から⑥の対応の中では、リスクの現実化を防止して発生確率をゼロにする「リスクの回避」が、一見すると望ましいように思えるかもしれない。しかし、発生可能性が極めて低いリスクに対してまで、高額なコストをかけて対応することは現実的ではない。また、前述の通り、リスクをゼロにするために事業・活動から撤退すれば、そこから得られるはずのリターンも消滅することになる。そもそも企業活動とは、資本を投下して何らかの事業・活動を行って利潤をあげようとする行為なのであるから、あまりにも過敏になって全てのリスクを忌避しようとするのは適切ではない。 そのため、実務的な対応としては②から⑤のリスクの最適化が選択されることが多くなるのだが、その場合は、発生確率と現実化した場合の影響を正確に評価する必要がある。

 そこで、「リスク評価」のプロセスで、発生可能性と対応コスト、ステークホルダーへの影響などに鑑みて、特定されたリスクのそれぞれにどのような対応を実施するのかを選択することになる。

 ちなみに、JISが例示するリスク対応の手法は上述のとおりだが、リスク対応については、それ以外の基準(例えば、プロジェクトマネジメントの国際標準である『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド』* など)の定義が用いられることもある。個々の企業組織が採用しているリスクに対する考え方やリスク対応の手法については、JISとは若干異なる尺度・基準が提唱されている場合もあるので、その違いに注意する必要がある。

* Project Management Institute (2013) A Guide to the Project Management Body of Knowledge. (邦訳:プロジェクトマネジメント協会(2013)『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド:PMBOKガイド』、第5版)

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