§ 位置情報・通信の秘密

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§ 位置情報・通信の秘密

 まず、近年のスマートフォンの普及により利活用が進められているのが位置情報である。スマートフォンのGPS機能を使った高精度の位置情報は、人の移動経路の分析によるマーケティングや、近隣の店舗等からのリアルタイムでの広告配信等、利用価値が高いとされているが、その野放図な利用は個人情報やプライバシーの保護、さらには通信の秘密の保護の観点から懸念されるところである。この点、例えば、電気通信事業者による位置情報の他人への提供は、利用者の同意がある場合、裁判官の令状による場合その他の違法性阻却事由がある場合に限って認められるとされる(電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン41条1項)。

 最後に、通信履歴について触れる。まず、通信履歴の記録について、通信履歴は通信の秘密に含まれるものとして厳格に保護されている。具体的には、電気通信事業者は、通信履歴については、課金、料金請求、苦情対応、不正利用の防止その他の業務の遂行上必要な場合に限り、記録することができ、具体的には6か月程度、適正なネットワークの運営確保の観点から年間を通じての状況把握が必要な場合など、より長期の保存をする業務上の必要性がある場合には1年程度保存も許容される(「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインの解説」202頁)。

電気通信事業者は、こうした必要のある範囲を越えて通信履歴を保存することはできないことになる。なお、この点については、2011年に改正された刑事訴訟法により通信履歴の保存要請の制度が設けられている(刑訴法197条3項)。同条項の規定によって要請があった場合には、原則として30日以内の所定の期間、記録の保存を行うことになる。

 次に、通信履歴の提供について、電気通信事業者は、利用者の同意がある場合、裁判官の発付した令状に従う場合、正当防衛又は緊急避難に該当する場合その他の違法性阻却事由がある場合を除いては、通信履歴を他人に提供しないものとする(電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン38条2項)。

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