《 不正アクセス 》
◆アクセス管理者に対する義務
以上のように不正アクセス禁止法による不正アクセス行為を処罰対象とするが、一方で不正アクセス行為を禁圧するため、以下のように不正アクセスを受ける側に対しても一定の義務を課している。
- ①防御措置構築の努力義務(法8条)
- ②不正アクセス再発防止のための都道府県公安委員会による援助(法9条)
- ③国家公安委員会、総務大臣及び経済産業大臣に対する不正アクセス行為の発生状況及びアクセス制御機能に関する技術の研究開発の状況を公表義務(法10条第1項)
- ④国家公安委員会、総務大臣及び経済産業大臣に対する、関係団体への情報の提供その他の援助義務(努力義務。法10条第2項)
- ⑤国の不正アクセス行為からの防御に関する啓発及び知識の普及義務(努力義務。法10条3項)
このうち、①については、アクセス管理者である者(通常は事業者であろう)に努力義務として課されるものにすぎないが、セキュリティ、管理体制を全く講じていない場合や極めて不十分な防御措置しか構築していない場合には、民事賠償責任を問われる可能性があり* 、アクセス管理者としては可能な限りセキュリティ対策を施しておく必要がある。
* 同条項は公法上の義務であり、ただちに民事上の損害賠償義務を基礎づけるものではないが、このような法律上の義務の存在により、私法上の義務が認められる可能性は否定できない。